英語字幕の活用

英語字幕で英語学習! Roman Holiday 『ローマの休日』

 映画『ローマの休日』について

今回取り上げるのは、不滅の名作『ローマの休日』です。制作されたのは1953年。ウィリアム。ワイラー監督作品で、主演はオードリー・ヘプバーンとグレゴリー・ペックです。この作品を知らない人はまずいないでしょう。ローマの観光スポットを舞台にしており、「ローマの休日」に出てくるシーンは、ローマ観光の目玉にもなっています。スペイン階段、トレビの泉、フォロ・ロマーノ、真実の口、サンタンジェロ城など数えきれないほどです。

この映画で使われる英語は、どれも平易な表現で、日常会話の題材として格好のものが多く含まれています。その意味では、この映画は英語学習のテキストとしても最適なものということができます。事実、この映画を題材とする英会話の本もたくさん出版されています。以下では、主なシーン別に、英語表現の学習を進めていきたいと思います。

地図の数字をクリックすると、英語字幕入りのシーン映像をごらんになれます。

1. フォロ・ロマーノでの出会いのシーン

アン王女(オードリー・ヘップバーン)は、睡眠剤を打たれていたにもかかわらず、こっそりと宮殿を抜け出し、フォロ・ロマーノのベンチでうたた寝をしていました。そこに通りかかったのは、ニュース記者のブラッドレー(グレゴリー・ペック)でした。見かねたブラッドリーは、アンに声をかけます。

 

 

( from "Roman Holiday")
  

 

snooze away うたたねをする、居眠りをする

Bradley: You're well read...well dressed...
snoozing away in a public street. Would you care to make a statement?
アンはうたた寝をしています。ブラッドレーはアンを起こし、タクシーで自宅へ送ろうとします。けれども、住所がわからず、タクシーの運転手も引き取りを拒否したため、仕方なく自分のアパートに連れて行くことになりました。
 



2. ジョー・ブラッドレイのアパート(マルグッタ通り51番地)

タクシーが最終的に向かったのは、スペイン広場にほど近い「マルグッタ通り51番地」でした。ブラッドレイはここに小さなアパートを借りて独りで住んでいました。彼はアメリカの通信社にニュース記者として勤務していたのです。
「マルグッタ51番地」は実在する住所です。私も一度訪ねてみたことがあります。扉のないアーチの門があり、奥にジョーの住んでいたというアパートがありました。中庭では、管理人と思しき人が観光客に説明をしていました。
 

 

rough it 不便な生活をする

男性のアパートとも知らずに、睡眠剤で意識朦朧としたアン王女は、ジョーに「服を脱がせて」と言いつけます。

Ann: Can I have a silk nightgown?
Joe: I'm afraid you'll have to rough it tonight ... in these pajamas.
Ann: Will you help me get undressed, please?
Joe: OK. ... UH.. There you are. You can handle the rest.
 

 

 

(from the movie "Roman Holiday")

recite  暗誦する、(詩などを)朗読する

ジョーは途中でやめてしまいます。アン王女は、パジャマに着替えながら、好きな詩を一節を暗唱します。

Ann: Do you know my favorite poem?
Joe: You already recited that for me.
Ann: Arethusa rose from her couch of snows in the acroceraunian mountains. Keats.
Joe: Shelly. Keep your mind off poetry and on the pajamas.
Ann: Keats.
Joe: Shelly. I'll be back in 10 minutes.

詩の作者をめぐる二人のやりとりは印象に残ります。果たしてどちらの答えが正解だったのでしょうか?ずっと気になっていたのですが、調べてみたところ、正解はShellyでした。

Percy Bysshe Shelley. "Arethusa"(アレトゥーサ), 1820の一節です。英語学習のページなので、あえて全文を引用、掲載しておきます。

Arethusa arose
From her couch of snows
In the Acroceraunian mountains;
From cloud and from crag,
With many a jag,
Shepherding her bright fountains.
She leapt down the rocks,
With her rainbow locks
Streaming among the streams;
Her steps paved with green
The downward ravine
Which slopes to the western gleams;
And gliding and springing,
She went, ever singing,
In murmurs as soft as sleep,
The Earth seemed to love her,
And Heaven smiled above her,
As she lingered towards the deep.
II
Then Alpheus bold,
On his glacier cold,
With his trident the mountains strook;
And opened a chasm
In the rocks—with the spasm
All Erymanthus shook.
And the black south wind
It unsealed behind
The urns of the silent snow,
And earthquake and thunder
Did rend in sunder
The bars of the springs below.
And the beard and the hair
Of the River-god were
Seen through the torrent’s sweep,
As he followed the light
Of the fleet nymph’s flight
To the brink of the Dorian deep.
III
‘Oh, save me! Oh, guide me!
And bid the deep hide me,
For he grasps me now by the hair!’
The loud Ocean heard,
To its blue depth stirred,
And divided at her prayer;
And under the water
The Earth’s white daughter
Fled like a sunny beam;
Behind her descended
Her billows, unblended
With the brackish Dorian stream:—
Like a gloomy stain
On the emerald main
Alpheus rushed behind,—
As an eagle pursuing
A dove to its ruin
Down the streams of the cloudy wind.
IV
Under the bowers
Where the Ocean Powers
Sit on their pearlèd thrones;
Through the coral woods
Of the weltering floods,
Over heaps of unvalued stones;
Through the dim beams
Which amid the streams
Weave a network of coloured light;
And under the caves,
Where the shadowy waves
Are as green as the forest’s night:—
Outspeeding the shark,
And the sword-fish dark,
Under the Ocean’s foam,
And up through the rifts
Of the mountain clifts
They passed to their Dorian home.
V
And now from their fountains
In Enna’s mountains,
Down one vale where the morning basks,
Like friends once parted
Grown single-hearted,
They ply their watery tasks.
At sunrise they leap
From their cradles steep
In the cave of the shelving hill;
At noontide they flow
Through the woods below
And the meadows of asphodel;
And at night they sleep
In the rocking deep
Beneath the Ortygian shore;—
Like spirits that lie
In the azure sky
When they love but live no more.

この詩の日本語訳(全文)は、次のサイトに載っていますので、大変参考になります。

https://blog.goo.ne.jp/gtgsh/e/ec3e7e810d11945ebf6bbd99e1a5ce5f

アレトゥーサはギリシア神話に出てくるニンフです。この神話によれば、アレトゥーサは美しい容姿をもっていたが、恋や結婚には関心がありませんでした。あるとき、アルペイトス河で水浴びをしていると、河の神アルペイオスの呼ぶ声がしました。彼女に恋をしてしまったのです。アレトゥーサはすぐに逃げ出しましたが、アルペイオスに捕まりそうになります。そこで、アレトゥーサはアルテミスに助けを求め、アルテミスの力で水に姿を変え、逃げ延びました。最後は、地下水になって海底をくぐり、シチリア島のシラクーサ近くで泉になったといわれています。いまでもシラクーサにはアレトゥーサの泉があり、神話の跡をとどめています。

 

 

("Alpheus chasing Arehtusa" by Antoine Coypel from Wikipedia)
この神話やシェリーの詩自体は、『ローマの休日』のストーリーとは無関係のようですが、強いて関連づけるなら、美しいアン王女が、某王国の私服刑事たちの追跡を逃れて、ジョーの助けを受けて、サンタンジェロ城の河に飛び込むシーンは、アレトゥーサの追跡物語と似ているといえないこともありません。

 

 

sober  酔っていない、しらふの

翌朝、ジョーは寝坊して通信社に出勤します。編集長に呼ばれ、王女とのインタビューはどうだったかと聞かれ、でまかせを言うのでしたが、実は王女は急病で記者会見は中止になったと知らされます。そのことを告げる新聞記事の写真を見たジョーは、はじめて、アパートに泊めた女性がアン王女であることを知るのでした。

ジョーはアパートの管理人にアパートの出入りをきびしく監視するように頼んだ上で、編集長に王女との独占インタビュー記事を高く買ってもらうという約束を取り付けました。編集長はジョーが酔っているのかといぶかしがります。

Boss: That particular story will be worth five grand to any news service. But tell me, if you are sober, just how you are going to obtain this fantastic interview?
Joe: I'll enter her sickroom disguised as a thermometer.

※grand  (米)1000ドル ⇒ five grand = 5000ドル

ジョーは、アン王女との独占インタビュー記事で5000ドルもらうという約束を取り付けました。

アパートに戻ったジョーは、アン王女本人であること確かめると、友人のカメラマン、アーヴィンに電話をかけ、とくダネがあるといって呼び出します。



3. 理髪店でのヘアカット

アンはジョーにお礼を言うと、アパートを去りました。ジョーは特ダネをものにしようと、アンの後をつけます。

アンはジョーから借りた金で、果物を買ったり、物珍しいローマの街歩きを楽しみます。

アンはトレビの泉のそばにある理髪店で足を止め、店内に入ると、髪を短くカットしてもらいました。このカットは、映画が封切られるとともに「ヘプバーン・カット」として若い女性の間で大流行になりました。

It's cool !  イケてる!

アン王女は髪を大胆に切ってもらい、気持ちよさそうです。理髪師は「イケてる!」と褒めます。

Barber: You artist? Huh? Painter?
Ah, I know. You modella!
Ann: Thank you.
Barber:  It's perfect. You be nice without long hair.
Now, it's cool.
Ann: Yes. It's just what I wanted.

 

 

 

(from the movie "Roman Holiday")

理髪師はアンに、今夜サンタンジェロ城近くの川辺で開かれるダンスパーティに行かないかと誘い、アンは「ありがとう」( Thank you) と答えました。



4. スペイン階段での再会

アンは理髪店を出て、スペイン広場に出ました。地図で見ると、歩いて15分くらいのところにあります。

アンは広場を渡り、アイスクリーム(イタリア語でジェラート)を買いました。スペイン階段でそのアイスクリームを食べているところへ、ジョーが階段を降りてきます。アンに会うためにわざと偶然を装ったのです。アンのところまで来ると、「や、君か!」と声をかけます。そこから、二人は再び行動をともにすることになります。

I have a confession to make. 告白しなければならないことがあります。

Joe: Well, It's you.
Ann: Yes, Mr.Bradley.
Joe: Or is it?
Ann: Do you like it?
Joe: Yeah. Very much. So that was your mysterious appointment.
Ann: Mr. Bradley, I have a confession to make.
Joe: Confession?
Ann: Yes. I ran away last night ...from school.
 

 

 

 

( from the movie "Roman Holiday"

(I'll) tell you what. じゃあ、こうしよう。

アンはそのまま宮殿に戻るつもりでしたが、ジョーがどこか行きたいところはないのか、と尋ねると、アンは「一日中気ままに過ごしたい。カフェに入ったり、ウィンドウショッピングをしたり、雨の中を歩いたり...」と本音を語ります。そこで、ジョーは、「じゃあ、それを全部いっしょにやってみないか?」と誘いました。もちろん、特ダネをものにするための下心があってのことです。

Joe: Why don't you take a little time for yourself?
Ann: Maybe anothr hour.
Joe: Live dangerously. Take the whole day.
Ann: I could do some things I've always wanted to.
Joe: Like what?
Ann: Oh, you can't imagine. I'd like to do just whatever I like the whole day long.
Joe: Like having your hair cut?
Ann: Yes. I'd like to sit in a sidewalk cafe. And look in shop windows, walk in the rain, have fun and maybe some excitement. Doesn't seem much to you, does it?
Joe: It's great. Tell you what. Why don't we do all those things ...together?
 

 

 

 

( from the movie "Roman Holiday" )



5. パンテオン前のカフェ

ジョーがまず連れて行ったのは、パンテオン前のカフェでした。実はあらかじめカメラマンのアーヴィンとここで落ち合う約束をしていたのです。アーヴィンの役目は、もちろん特ダネに添える写真を撮ることです。

have a fit  ひきつけ(発作)を起こす
pact  取り決め ;  make a pact  取り決める、申し合わせ

パンテオン前のカフェ「Rocca」で、ジョーとアンは会話を楽しみます。

Joe: What will the people at school say when they see your new haircut?
Ann: The'll have a fit. (気絶するでしょうね) What would they say if they knew I'd spent the night in your room?
Joe: Don't tell your folks.  I won't tell mine.
Ann: It's a pact. (約束よ)

(dead ) ringer  そっくりな人、瓜二つの人

そうするうちに、カメラマンのアーウィンがやってきます。アーウィンはアンを見て、「君は瓜二つだと言われないか?....」といいかけます。すると、ジョーは、それ以上言わせないために、アーウィンの足を蹴ります。

Irving: Hey, anybody ever tell you, you're a dead ringer for -- Ow!
Uh Well, I guess  I'll be going.
Joe: Don't do that, Irving. it down. Join us.
Irving: Just till Francesca gets here.

アーウィンは再三、ジョーの職業などを言いそうになったので、そのたびにジョーはそれを邪魔します。事情を知らないアーウィンはついにがまんできなくなり、席を立ちます。

ジョーはアーヴィンを店の奥に連れていき、王女独占インタビューで5000ドル手に入ることを知らせます。そして、取り分の25%をあげると約束します。もちろん、アーヴィンはこの話に乗りました。

アーヴィンはさっそく、シガレットライターに仕込んだ小型カメラで、生まれて初めてタバコを吸うというアンの姿を撮ります。

 

 

( from the movie "Roman Holiday" )

gismo (gizmo)  新案の小道具、新式の装置
verdict  ( 陪審員が下す)評決、判決

Irving: There. The gismo works.
Joe: Well, what' the verdict? OK?
Ann: Nothing to it.

 



6. 真実の口

ジョーはアンを乗せてスクーターでローマの街なかを走りますが、ジョーが降りたスキに、アンが運転席に座ると、スクーターが走り出してしまいました。ジョーが慌てて後部席に乗って補助しますが、スクーターは暴走して、ついには警察に捕まってしまいます。警察の取り調べをなんとかしのいだジョーの一行は、近くの寺院にある「真実の口」に行きました。

ここで、ジョーはアンに説明します。「もし嘘をついている人がこの口に手を入れると、噛み切られてしまうという言い伝えがあるんだ」。

You beast! けだものめ、こん畜生!

Joe: The mouth of truth. The legend is that if you're given to lying and put your hand in there, it'll bee bitten off.
Ann: Ooh, what a horrid idea.
Joe: Let's see you do it.
Ann: Ha ha! Let's see you do it.
Joe: Sure. Aah! (噛まれたふりをしてアンをおどかす) Hello.
Ann: You beast!
 

恐る恐る口に手を入れるアン。でも奥まで入れる勇気がありません。ジョーに代わってもらいます・ジョーは口の奥まで手を入れますが、突然「あー!」と叫び、噛まれたフリをします。驚いてジョーに抱きつくアンでした。二人の間に愛が芽生えた瞬間でもありました。

 

 

( from the movie "Roman Holiday" )



7. サンタンジェロ城のダンスパーティ

ジョーとアンが最後に向かった先は、サンタンジェロ城でした。ここで夜に開かれるダンスパーティにアンが誘ったのです。これが二人の最後の別れの場であることを、ふたりとも知っていました。

二人が楽しくダンスをしているところへ、アン王女の行方を捜索していた某王国の私服刑事たちが大挙して乗り込み、アン王女を確保しようとします。彼らは乱闘となり、最後はジョーとアンが川に飛び込んで逃れます。

Say (間投詞的に)おい、ねえ。

Joe: Say, you know, you were great back there.
Ann: You weren't so bad yourself. (Joe kissed Ann)
 

向こう岸にびしょ濡れでたどり着いた二人は抱き合って思わずキスを交わします。

 

 

( from the movie "Roman Holiday" )



8. バルベリーニ宮殿前での別れ

いまや、二人は愛し合う仲になっていました。けれども、アンは王女として宮殿に戻らなければなりませんでした。ジョーはアンを宮殿の近くまで送り、最後の別れを告げます。

Drive away = drive off 走り去る

Ann: I have to leave you now. I'm going to that corner there and turn.
You must stay in the car and drive away.
Promise not to watch me go beyond the corner.
Just drive away and leave me ...As I leae you.
Joe: All right.
Ann: I don't know how to say good-bye.
I can't think of any words.
Joe: Don't try.
(They hugged and kissed.)
 
 

 

 

 

(from the movie "Roman Holiday" )

アン王女を深く愛してしまったジョーは、もはや特ダネをモノにするという当初の目的は捨て、アンとのかけがいのない思い出を大切にすることを決意し、特ダネ記事を反故にすることにしました。



9. コロンナ宮での最後の別れ

コロンナ宮の記者会見場で、アン王女は各国の記者たちとの会見に臨みます。ジョーが記者であることを初めて知った王女でしたが、「あなたとの友情と信頼は変わらない」というジョーの言葉に、かすかに頬笑みながらうなずき、最後の別れを告げます。

be unjustified 不当ではない、正しい、筋の通った

Press: And what, in your opinion of your highness, is the outlook for friendship among nations?
Prince Ann: I have every faith in it, as I have faith in relations between people.
Joe: May I say, speaking for my own press service, we believe that your highness' faith will not be unjustified.
Prince Ann: I am so glad to hear you say it.

ジョーが最後に会見場を去るラストシーンは心に残ります。

 

 

( from the movie "Roman Holiday ")

-英語字幕の活用