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映画字幕で英語学習! East of Eden 『エデンの東』

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『エデンの東』と旧約聖書

今回取り上げる『East of Eden』(エデンの東)は、1954年にアメリカで制作された映画です。原作は、1952年に出版されたスタインベックによる同名の小説"East of Eden"でした。舞台は、スタインベックの出身地と同じ、カリフォルニア州サリナスです。半ば自伝的な要素ももつこの小説は、題名からも察せられるように、旧約聖書の「創世記」第4章、アベルとカインの物語にある「善と悪の戦い、人間の負った原罪」をテーマとしています。

そこでまず、旧約聖書の創世記から、カインとアベルの物語を振り返ってみたいと思います。少し長くなりますが、もっとも信頼できる日本語訳として、新日本聖書刊行会訳『旧約聖書 新改訳』から、カインとアベルの物語を引用しておきたいと思います。

人は、その妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み「 私は、 主によって一人の男子を得た」と言った。 彼女はまた、その弟アベル を産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは大地を耕す者となった。しばらく時が過ぎて、カインは大地の実りを主へのささげ物として 持って来た。

アベルもまた、自分の羊の初子(ういご)の中から、肥えたものを持っ て来 た。主はアベルとそのささげ物に目を留められた。しかし、カイン とそのささげ物には目を留められなかった。それでカインは激しく怒り、顔を伏せた。

主 はカインに言われた。「 なぜ、あなたは怒っているのか。なぜ 顔を 伏せているのか。 もしあなたが良いことをしているのなら、 受け入れ られる。しかし、もし良いことをしていないのであれば、 戸口で罪が 待ち伏せている。罪はあなたを恋い慕うが、あなたはそれを治めなけれ ばならない。

カインは 弟アベルを誘い出した。 二人が野にいたとき、カインは弟アベルに襲いかかっ て殺した。

主はカインに言われた。「 あなたの弟アベルは、どこにいるのか。」カインは言っ た。「 私は知りません。私は弟の番人なのでしょうか。」

主は言われた。「 いったい、あなたは何ということをしたのか。声が する。 あなたの弟の血が、その大地からわたしに向かって 叫んでいる。 今や、あなたはのろわれている。 そして、口を開けてあなたの手 から弟の血を受けた大地から、あなたは追い出される。

あなたが耕しても、大地はもはや、あなたのために作物を生じさせない。 あなたは地上をさまよい歩くさすらい人となる。」

カインは主に言った。「 私の咎 (とが)は大きすぎて、負いきれませ ん。あなたが、今日、私を大地の面(おもて)から追い出されたので、 私はあなたの御顔(みかお)を避けて隠れ、地上をさまよい歩くさすらい人となります。 私を見つけた人は、だれでも私を殺すでしょ う。」

主は彼に言われた。「それゆえ、わたしは言う。だれであれ、カインを殺す者は七倍の復讐を受ける。」 主は、彼を見つけた人が、だれも彼を打ち殺すことのないように、カインに一つのしるしをつけられた。

カインは主の前から出て行って エデンの東、ノデの地に住ん だ。

(新日本聖書刊行会訳『旧約聖書 新改訳』創世記第4章より)

創世記第4章の主役は、エヴァの生んだ長男のカインです。彼は主が自分の捧げ物を顧みられず、弟のアベルの捧げ物だけを受け入れたことに腹を立て、弟のアベルを殺してしまいます。これは人間が犯したはじめての殺人だとされています。これに対し、主はカインに重い罰を与えます。カインは罰の重さに耐えかねると訴えると、主はカインに刻印を押し、カインを殺そうと企むものは7倍の復讐を受けるだろうと言います。そして、カインは自分の土地を捨てて、エデンの東、ノデの地に移り住み、子孫を残すことになりました。

さて、『エデンの東』では、創世記のこの部分で、重要な意味をもっている「あなたはそれを治めなければならない」というくだりについて、原文に立ち返ってみた結果、"timshel"だったとしています。この言葉は、"thou mayest"という意味であり、現代英語に直すと、thouは"you"、"mayest"は"may"に相当します。つまり、主のことばは、人間が罪を犯したときに、自らの意思で選択する(更生する)ことができることを暗示している、とスタインベックは解釈したのです。言い換えれば、カインが重い罪を犯したことによって、人間は初めて主体的な選択の自由をもつことができるようになったともいえます。

この"timshel"というのは、アダムが死の間際に残した最後の言葉でした。それは、罪を犯したキャルへの赦しのことばでもありました。映画を鑑賞する上でも、キーポイントになるところだと思います。

Adam looked up with sick weariness. His lips parted and failed and tried again. Then his lungs filled. He expelled the air and his lips combed the rushing sigh. His whispered word seemed to hang in the air:
"Timshel!"
His eys closed and he slept.

(from John Steinbeck, "East of Eden" )

スタインベックはアメリカの小説家であり、1962年にはノーベル文学賞を受賞しています。スタインベックの作品では『怒りの葡萄』がもっとも高い評価を受けており、『エデンの東』は、物語の構成に難があるとか、あまりにもセンチメンタルだとかいった批判を受けてきましたが、近年では高い評価を受けるようになっています。平易なアメリカ英語で書かれており、英語学習には最適な教材ともいえます。映画と合わせて英語版(Penguin Books)の小説を読むことをおすすめします。原書では、三代にわたるカインとアベルの物語が描かれています。

映画『エデンの東』(East of Eden)について

『エデンの東』(East of Eden)は、1954年に制作された映画で、スタインブックの小説『エデンの東』の後半部分を描いたものです。

ジェームズ・ディーンが演じるキャルは不良っぽく、善良で正義感の兄とは対照的な性格でした。謹厳実直なクリスチャンの父は、何かにつけて、兄のアロンを身びいきし、キャルには厳しく当たります。キャルはアロンに嫉妬を抱いていました。

あるとき、キャルは死んだと聞かされていた母親が実は生きていて、娼婦をしていることを突き止めます。そして、自分は悪い母親の血を引いていると思い込みます。

父のアダムは農業である程度の蓄えをもっていましたが、あるとき、野菜を冷凍して運ぶという計画を立てます。しかし、列車が雪のために途中で立ち往生し、野菜がすべて腐ってしまい、大損害を蒙ります。

キャルは、父親の損失の穴埋めをしようと、母親から借りた資金を元手に大豆を大量に買い付け、戦争で大豆が暴騰したことで大儲けします。そのお金を父親の誕生日でプレゼントしようとしたところ、父親は激怒し、それを農民に返せとキャルに言います。

一方、プレゼントの代わりに「アブラと婚約した」と報告したアロンに対して、父は「これ以上のプレゼントはない」と喜びます。これを聞いて絶望したキャルは、アロンへの激しい嫉妬心から、彼を無理やり母親のもとへ連れて行きます。善良な純粋なアロンは、自分の母親が娼婦だったことに大きなショックを受け、正気を失い、志願して戦場へ行ってしまいました。

アロンを失った父のアダムズは、発作を起こして倒れ、脳内出血のために病の床につきます。余命いくばくもない父に、キャルは自分のしたことを心から悔いますが、父は意識不明で答えてくれません。アブラはキャルを愛していることを告げ、キャルが一生後悔して惨めにならないよう、彼を助けてくれるよう父に頼みます。

アダムは最後の力を振り絞って、枕元のキャルに「いやな看護婦を追い払ってくれ。お前が代わりに看病してくれ」と頼みました。それはアダムのキャルへの赦しの言葉でした。キャルは嬉しそうにアブラにキスすると、椅子を引き寄せて父の看病を始めるのでした。このラストシーンでは、「エデンの東」の美しい主題音楽が流れ、見る人の涙を誘います。

主な配役は次の通りです。

  • James Dean  as Caleb Trask
  • Julie Harris as Agra Bacon
  • Raymond Massey as Adam Trask[
  • Richard Davalos as Aron Trask
  • Jo Van Flee as Cathy Ames / Kate Trask
  • Burl Ives as Sam (the Sheriff)

映画の製作者は、巨匠エリア・カザン。主役のキャルを演じる俳優はオーディションで選ばれましたが、最初はマーロン・ブランド、ポール・ニューマンらが候補に上がっていましたが、年齢が若いジェームズ・ディーンが抜擢されることのいなりましたディーン自身、別居中の父親と仲が悪く、配役の人物像と似ていたことから、キャルはディーンにとって、まさにはまり役だったのです。後に、原作者のスタインベックはディーンと会い、彼がキャルの適役だと絶賛したといいます。

ジェームズ・ディーンは、「エデンの東」で一躍スターダムにのし上がります。その後、若くして交通事故で不慮の死を遂げたディーンでしたが、彼は「エデンの東」で永遠のヒーローとして生き続けることになりました。

それでは、本編を見ながら、日常会話に役に立つ英語表現をピックアップしていきたいと思います。

hang around  ぶらぶらする、うろつく

キャルは、母親が生きているらしいとのうわさを聞き、モントレーの家まで来て、様子を見ます。それを不審に思った家の主人が出てきて、キャルに詰問します。

Man: What are you hanging around for, anyway?
Cal: Would she talk to me?
Man: Kate?  What for? What do you want ?
Cal: Just wanna talk to her.

be at the end of the rope
(....の)我慢の限界に達している、万事窮している、進退窮まっている。

Adam: I'm at my rope's end with that boy. I don't understand him. I never have. Aron I 've understood since he was a child.

キャルが納屋の上でたばこを吸っているのをみて、アダムは厳しく叱ります。アダムは「あの子には本当に手こずっている」と嘆きます。

納屋でアロンは恋人のアブラと一緒にいて、結婚してから夢を語ります。キャルはそれを盗み見していました。アブラはキャルが怖いと言います。すると、キャルが何を思ったか、倉庫に積んである氷の塊を次々に下に落とします。この氷は、父のアダムが野菜の冷凍用に仕入れたものでした。

confess one's transgression  罪を告白する

父は激怒して、その夜、キャルに罰として聖書の一節を読ませます。それは、犯した罪を告白し、神が赦すという一節でした。

Cal: "I said, I will confess my transgressions unto the Lord....
"and thou forgavest the iniquity of my sin. Selah."

けれども、「番号を読むな」という父の指示に従わなかったため、アダムは怒り、「おまえはちっとも悔い改めていない。おまえは悪い人間だ」と責めます。

repentance 後悔、悔い改め

Cal: Eight
Adam: You have no repentance! You're bad!  Through and through, bad.
Cal: You're right. I am bad. I knew for a long time.

父は、badといったことを、言い過ぎたと訂正し、キャルにこいう言うのでした。

Adam: Cal, listen to me. You can make of yourself anything you want. It's up to you. A man has a choice. That's where he's different from an animal.

このことばは、スタインベックの信条でもありましたが、キャルの心には響かなかったようです。

キャルは母親のいる娼館へ行きますが、ケイトに追い出され、シェリフの所で連れて行かれます。そこで、ケイトがアダムの夫であることを知らされます。

sell one short〈人・物〉をあなどる, 低く評価する

シェリフはキャルを自宅まで送りながら、父のアダムがどんなに善人かを語りました。そして、別れ際に、「お父さんを軽々しく扱ってはいけないよ」と諭します。

Sherif: He's a good man, Cal.  Don't sell him short, boy.

アダムのレタス冷凍輸送計画は、列車が雪で立ち往生してしまったために、失敗に終わり、アダムは大きな損失を被ります。

キャルは父の損失をなんとか穴埋めするために、大豆で一儲けしようおt思い立ちます。父の友人に相談を持ちかけ、5000ドルの元手を出せば仲間に入れてくれるとの約束を取り付けます。

キャルにはそんな大金はありません。借金するしかありませんが、あては母親のケイトだけでした。

キャルに会ったケイトは初めキャルにお金を貸すことを渋りますが、キャルの憎めないキャラに負け、5000ドルを貸してくれました。

キャルが予想したとおり、アメリカはドイツに宣戦布告し、大豆相場は暴騰します。これで、キャルは父親の損失を埋めるだけの金を手にしました。

キャルは父の誕生日プレゼントとして、この金を渡そうとしていました。そのために、アブラに手伝ってほしいと頼み、アブラも承知します。

be touched  感動した、心を動かされた。

アダムの誕生日が来ました。キャルとアブラは、父に内緒で家の中を誕生日祝いのために飾り付けました。家に入ったアダムはそれを見て喜びます。

Cal: Hey, let's go in.
Happy birthday, Dad.
Abra: Happy birthday, Mr. Trask.
Is it possible? I'm very touched.
Cal: Are you surprised?
Adam: I had no idea. I'd forgotten completely.

そして、キャルがアダムにプレゼントを渡したとき、アダムが包みを開く前に、アロンがアダムに言いました。「アブラと僕からも贈り物があります。僕らは婚約したんです」。

これを聞いて、アダムは、これ以上のプレゼントはない、と喜びました。

Aron: I didn't tell Abra I was going to do this, but we're engaged.
Adam: I couldn't have wished for anything nicer. A lovely birthday present. I can't imagine having anything better than this.

そのあと、アダムはキャルからのプレゼントを開けましたが、それが戦争で儲けた金だと知り、「農夫から奪ったこの金は返してきなさい」と冷たく言い放ち、受け取りを拒否したのでした。キャルは、泣きながら父親に抱きつき、"I hate you!"と叫びながら、家を出ていきました。それは、旧約聖書でカインが主への贈り物を拒否されたのと同じくらいのショッキングな出来事でした。

(泣きながらアダムに抱きつき、懇願しようとするキャル)

父への恨みは、兄アロンへの憎しみへと変わります。「偽善者」アロンを無理やり母親のもとへ連れて行きます。醜い娼婦の母親と対面させられたアロンは、動転して正気を失います。独り帰宅したキャルに、アダムは「アロンはどこだ?」と尋ねます。それに対し、キャルは聖書のカインと同じように、こう答えました。

Adam: Where is Aron?
Cal: I don't know. I'm not my brother's keeper. (僕は兄さんの番人じゃないよ)

娼婦の母親と会ったアロンは、狂ったように自暴自棄に陥り、志願兵として列車に乗り込んでしまいます。駆けつけた家族にもただ狂ったように笑うばかりでした。(映画には出てきませんが、後に、アロンは戦死してしまいます。それがキャロンの罪の意識をさらに大きくします)

stroke (脳卒中の)発作

アダムは心痛のあまり発作を起こし、倒れます。呼ばれた医師はアダムの症状を告げます。半身麻痺で先は長くないという診断でした。

Sherif: Do you know what a stroke is, exactly?
Doctor: This one is a leakage of blood in the brain. caused by shock.
The left side is paralyzed and the right side partly.
In other words, your father is nearly helpless.
Cal: Will he die?
Doctor: He might live a week or a year. He might die tonight.
Sherif: "cain rose up against his brother Abel, and slew him."
"And Cain went away and dwelt in the land of Nodo, on the east of Eden."
Now why don't you go away some place?

シェリフはキャルに、聖書の言葉を引きながら、他の町に移ってはどうかと言い残します。キャルも同意しますが、アブラは、行ってはいけないと言いました。

死の床にあるアダムに、アブラは必死に頼みます。キャルに少しでも愛を示してください。さもなければ、キャルは一生立ち直れないでしょう、と。

Dare to do something 思い切って....する

Abra: Excuse me, Mr. Trask, for daring to speak to you this way....but it's awful not to be loved. It's the worst thing in the world. He did something very bad, and I'm not asking you to forgive him. You have to give him some sign that you love him.... Or else he'll never be a man.He'll just keep on feeling guilty and alone, unless you release him. Please help him.

キャルは再び父の枕元に行き、父に話しかけます。

A man has a choice 人間は選択ができる

この言葉は、アダムが以前にキャルに語ったことばでした、キャルはそれを覚えていました。この言葉は、原作者スタインベックの信条でもありました。

Cal: You used to say that was where he was different from an animal. You see, I remember. A man has a choice, and the choice is what makes him a man.

アダムはキャルの言葉に答えるかのように、かすかな声で「あの看護婦には我慢がならない。他の人に替えてくれないか」と訴えました。そして、「できればお前に看病をしてもらいたい」と頼むのでした。それはキャルにとって、救いとなる父からの愛のことばだったのです。

(from the movie "East of Eden")

stand someone (人が)(....)にがまんならない

Adam: The nurse, (I) can't stand her. Get me another.
Cal: I can't stand her, either.
Abra: What did he say?
Cal: He said, " Don't get anybody else."
"He said, "You stay with me... and you take care of me."

喜びに打ち震える中で、キャルはアブラを抱き寄せ、静かに父の枕元に椅子を引き寄せるのでした。美しく流れ始めた「エデンの東」のテーマ音楽が、見る人すべての涙を誘います。



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