あらすじ
ニューヨークのマンハッタンに住む広告代理店勤務のテッド・クレイマー(ダスティン・ホフマン)は、仕事に忙殺されながらも、妻ジョアンナ、5歳の息子ビリーと幸せな生活を送っていた。ところが、或る日、妻のジョアンナが急に一人で家を出てしまう。仕事のしすぎで家庭を顧みなかったことを詫びるが、悪いのは私の方、自分の本当にしたいことを見つけるために家を出るのだ、ビリーの養育はあなたに預けるわ、といいろくに荷物も持たずにテッドのもとを去ってしまった。
翌日から、テッドは会社での仕事に加えて、ビりーの養育も抱えて奮闘することになった。しかし、せっかく目の前にあった昇進は水の泡となり、やがて、上司からくびを言い渡される。
さらない悪いことに、ビリーを公園で遊ばせていたとき、ビリーがジャングルジムから謝って転落し、頭に大けがをしてしまう。やがて、カリフォルニア州に定住した妻が、ビルの養育権奪還を求めて裁判を起こすことになり、テッドは妻との裁判にも勝訴しなければならなくなった。テッドが会社を首になったのは、ちょうどその頃だった。失業中の身では、裁判に勝てるはずもなく、テッドはわずか1日で新しい会社から職を得ることにかろうじて成功した。
けれども、裁判の判決は、妻に養育権を認めるという結果であった。いよいよビルと別れを告げなければならない日、ビリーを引き取りに来た妻のジョアンナは、「自分がビリーを引き取るのは、かれのためにはよくない。ビリーはここに置いて行く」といって、テッドとビリーのもとから去って行った。
妻の突然の家出
テッドはバリバリの有能ビジネスマン。仕事は順調で、上司からは、近いうちに昇進の約束も取り付け、有頂天だった。ところが、自宅に戻ってみると、妻は荷物を片付けて一人出て行くところだった。これはテッドにとって青天の霹靂の事態であった。
テッドはジョアンナを引き留めようと必死になったが、ジョアンナの決意は固かった。
- I can't hack it. こんな生活を続けられないわ。
- Let's just go inside. 一緒に中に入ろう
(難しくて、退屈で)...をうまくやり抜けない、続けられない
・I've been splitting blood to get this agency its biggest account.
(最大の代理店契約を成立させるために心血を注いできたんだ)
・Joanna and I never had any problems until you and Charley split up.
(君とチャーリーが別れるまでは、僕とジョアンナの間にはまったく問題はなかったんだ。)
(夫婦、恋人関係の人が)別れる、関係を絶つ。
ジョアンナが家出した翌朝、テッドとビリーは、二人だけの生活を始めた。ビリーの好物はフレンチ・トースト。けれども、テッドは作り方が分からず、ビリーの助言を借りながらつくる。パンがミルクのカップに入らないので、テッドは、急遽自分流のやり方で、パンを二つに割って済ませてしまう。おまけに、フライパンを焦がして、それを床に落としてしまった。テッドは思わず、「この野郎!} (Damn it! Goddame!)と叫んでしまう。テッドとビリーだけの生活は前途多難でした。
「私は、上階の重役連中に、ミッド・アトランティック社の営業を君に任せると話したところだ。」テッドはこれに対し、絶対に家庭のことは職場に持ち込まない、と約束した。しかし、上司の顔つきは険しかった。
家に帰ると、テッドを遊ばせながらリビングルームで会社の仕事をしていた。しかし、ビリーのせいで大事な書類を台無しにしてしまい、思わず叫んでしまうのだった。ビリーは、母親が戻ってくるのを心待ちにしていた。テッドは、帰らないジョアンナを忘れるために、写真などの記念品を片付けるのだった。
会社のパーティでも、テッドはビリーの学校へ引き取りに行かなければならないいので、たびたび早引けをした。そんなとき、上司は顔を曇らせるのだった。
・It is not yucky, Billy. Eat it. まずくなんかないよ、ビリー。食べなさい。
テッドとジミーの家庭生活も、かならずしも順調とはいえなった。食事のときも、ビリーはテッドが買ってきたハンバーガーに「まずい」(yucky)と文句をつけて、口にしようとはしなかった。
テッドとマーガレットがビリーを公園で遊ばせていたとき、ビリーがジャングルジムから落下して、大けがを負うという事故があった。テッドは直ちにビリーを抱えて病院まで必死に走った。医師の診断は10針縫うという厳しいものだった。
そんなある日、テッドにもとにジョアンナから電話があり、会いたいと言ってきた。レストランで会い、話し合ううちに、ジョアンナが「ビリーを欲しい」と切り出した。テッドは、怒ってこう切り返した。
We're gonna sit here and bat this back and forth.
(こんな話は、僕らが長いことしてきた事の繰り返しだ)
事態は、ビリーの養育権をめぐって、裁判沙汰へと発展した。弁護士は、養育権に絡む事案は勝つのが難しい、と言うのだった。
そんな折も折、テッドは上司からクビを言い渡された。ビリーの世話で会社の仕事に支障をきたすことが重なったためだった。
失業してしまっては、裁判に勝つ見込みはゼロである。しかも、裁判に備えての時間的猶予は、わずか1日しかない。テッドは、1日で新しい仕事を見つけるしかなかった。正装して、履歴書と手がけた作品を手に、テッドは雇ってくれそうなニューヨーク中のオフィスを訪ねまわった。
最後に訪ねたマンハッタンのオフィスで、担当者に作品を見せると、彼は好印象をもったが、「採用の可否は明日以降お知らせする」というので、テッドは「ご返事は今日中に御願いします」と迫った。人事担当の重役は、この熱意に負けて、テッドに外で待つよう指示し、数分間内輪だけの協議を行った。その結論は、「採用しよう」という、テッドにとって嬉しい回答だった。
・なぜあなたは、ご自分にとって過剰資格になるような地位に関心があるのですか?
新規採用が決まった新しいオフィスをビリーに自慢しようと、テッドはマンハッタンを見下ろす彼のオフィスに連れて行った。
ビリーの養育権をめぐる裁判が始まった。
・原告側の弁護人は用意ができていますか?
・はい、裁判長
裁判は、母親のジョアンナの勝訴に終わった。しかし、ジョアンナがテッドの自宅にビリーを引き取りに行ったとき、彼女の気持ちは大きく変わり、ビリーを引き取るのを諦めた、と語った。